神戸市東灘区御影 徐小児歯科 日本小児歯科学会専門医 八木成徳
■むし歯について
●前歯が溶けてきました
2歳前後の子どもで、前歯が溶けてだんだん小さくなってきましたとよく保護者の方が来院されます。この原因はほとんどの場合断乳(最近は卒乳という言葉が使われます)の遅れです。よく小児歯科の教科書に書かれておりますが、大体1歳前後で授乳は止め、離乳食に移行するよう書かれております。お昼間の授乳に関してはさほど問題はありませんが、就寝して夜中目を覚まして夜泣き防止のために授乳させた場合など最悪の結果を招きます。人間は就寝時には活性が非常に落ちます。当然唾液の分泌も減るので、授乳したミルクが上の唇と上の前歯の表面に貯留します。ミルク自体には歯を溶かす作用はありませんが、歯の表面を完全にきれいに出来てなく歯垢が残った状態だと歯垢中の細菌がミルクによって活動を開始して酸を作ります。それが歯の表面を溶かし広い範囲のむし歯を作るのです。夜泣きするのでかわいそうだからなかなか止められないというお母さんもおられますが、重度のむし歯になって痛がったり、歯医者に来て治療するほうがかわいそうだと思って、止める努力をしましょう。
また、最近は発熱時に補水の目的で、小児科や内科の先生からスポーツ飲料を勧められ、その甘味が忘れられなくて癖になって飲料する場合も同じように重度のむし歯を作ってくることも多いです。
その他、これはまれですが、もともと歯のエナメル質の形成がうまくいかなくて歯の表面が溶けている場合もあります。
卒乳の遅れやスポーツ飲料が原因で出来るむし歯を哺乳ビンう蝕と言い、2番目のものはエナメル質形成不全や、エナメル質減形成と呼ばれています。