神戸市東灘区御影 徐小児歯科 日本小児歯科学会専門医 八木成徳
■歯の構造 ■歯列 ■口腔 ■むし歯について |
むし歯について どうしてむし歯ができるの? 「むし歯の原因は?」とお母さんにお聞きしますと、「砂糖」とか「歯をみがかない」という自信のなさそうな返事が返ってきます。どうもその原因をご存知でないお母さんが多いようです。その原因は他の感染症と同じようにばい菌(ミュータンス菌など)が歯の表面にたくさん増えることによって起こります。ばい菌が唾液中を流動している状態だといいのですが、歯の表面にはネバネバとしたペリクルと言う膜があってそこに食べかすとばい菌が付着します。その中でばい菌が砂糖(しょ糖など)を栄養源にして酸やデキストランを作ります。このかたまりが歯垢(しこう、プラーク)です。そのなかでは唾液中とは違い酸もばい菌も簡単には洗い流されなくなり、歯の表面に停滞します。歯の表面はずっとその酸にさらされることとなり脱灰(歯が溶けること)という現象が起こります。これがむし歯です。 さて、もっと現実的生活に当てはめてむし歯について勉強してみましょう。 よく見る図ですね、真中のう蝕の部分が成立するには細菌、砂糖、歯そして時間の4つの条件が揃って初めてできるということを表しています。まさに歯が無ければむし歯にはなりません(笑)
図はステファンの曲線といいまして、青い部分は歯のエナメル質が溶けない領域を表しています。赤い部分は歯が溶ける領域を表しています。一般的に人の口の中はpH7.0弱の弱酸性ですが、砂糖水でうがいをすると、図中の黄色い直線のように口の中が急激に酸性に傾きあっという間に歯のとける領域まで酸性にいきます。その後何もしなくとも唾液が出てきて元のpHまで戻ります、その時間は平均で約30分かかります。この図の脱灰と書かれている茶色の部分が長いほどむし歯にかかりやすくなります。
図は緑の部分が歯の溶けない領域、赤が歯のとける領域を示してます。
上の図は規則正しい生活習慣を表しています。すなわち朝8時に朝食、12時に昼食、3時におやつ、6時に夕食という具合にです。食事をするたびに口の中が歯の溶ける酸性領域に傾きますが、下の不規則な食生活を過ごしているものと比較しますと、明らかに赤色の歯の溶ける領域の部分の面積が小さいのがわかります。
ここでまた1つむし歯の成り立ちから予防の方法がわかります。ダラダラと何度もお口の中に食べ物を入れないで規則正しい食生活を過ごせばむし歯の予防になるのです。
上で説明したことを実際の疫学調査で確かめたのが左図です。
少し見にくいですが、緑の部分が乳児院でむし歯のある子どもの割合、赤い部分が一般家庭のむし歯のある子どもの割合を表してます。
2年間だけの調査結果ですが明らかに乳児院の子ども達にむし歯が少ないのがわかります。乳児院では決まった時間にしかおやつを与えないのでこのような結果になったのがお分かりですよね。
当院の待合室では飲食厳禁にしてますが、ぐずる子どものご機嫌を取る為に保護者の方が常備しているおやつを握らせているのをよく見かけます。治療終了後にそのような母親が「かわいそうに、痛かった?」といっているのもよく見かけます。考えてください、本当にかわいそうな事をしているのはどっち?子どもは自分で自分の健康を守れません、保護者の方はご自分のお子さんが可愛いなら毅然とした態度で子どもに接してほしいものです。
|